日本流のサービス、中国ではどう受け止められているのか?

                      ショップアドバイザー 島田ともこ

【島田 ともこ プロフィール】

中国歴20年。現在、中国の日系企業で販売店舗全般に関する業務に従事。店舗設計の図面チェックやディスプレイ(ハード 面)から、 販売員の接客サービス(ソフト面)までをトータルでサポート。日中の文化やメンタリティの違いを重視し、地に足ついた日中ビジネスを展開中。 

 

私が全国各地のお店を視察する中で、とても心に残る中国人販売スタッフが何名かいました。今回はまず、彼女たちが実践している中国流サービスについてご紹介しましょう。

 

ここまで来たか、中国流サービス!

 

 A店長は高校卒業後に小売業に従事し、すでに14年のキャリアを持つ大ベテラン。第一印象は「怖い」。売場での彼女はテキパキと仕事をこなしていくタイプなのですが、笑顔がなく、2時間おきくらいにレジで売上を確認する、いわゆる数字重視型の店長です。売上に敏感で、貪欲であるのは非常に関心だけど、どんな接客するのか・・・かなり不安気な私を横目に、彼女は見事な中国流サービスを披露してくれました。

 

その日入荷した荷物の中に新商品を確認するや否や、すぐさま携帯電話を取り出し常連客に電話で知らせました。彼女のスゴイところは、商品によって連絡する顧客を瞬時に判断し、しかも買ってくれそうな可能性が高い顧客から優先的に電話するところです。相手の都合のいい時間帯も記憶済み、徹底した電話交戦を仕掛けます。またOLへの連絡はメールで。すぐにメールで知らせて、できればその日の仕事帰りに立ち寄ってもらおうという魂胆です。「顧客の一番の関心事は『新商品』であり、情況を迅速に提供することは顧客獲得のために課せられた自分の使命だ」と言っていました。実際、このお店の常連さんは彼女に惚れ込んで足を運んでいます。

 

 Bさんは地方都市の小さなお店で働く販売員です。子ども用レインコートを袋から出し針金ハンガーにかけて販売していました。そのハンガーはレインコートと同系色のリボンを巻きつけてあり、針金部分が見えないような優しい心配りが施されていました。きっと彼女が自宅で手作業したのでしょう。注意して細かいところをチェックしてみると、至る所で実にきめ細やかな配慮がなされており、商品の一つ一つが輝いて見えました。彼女のお客様や共に働く同僚への思いやりが感じられ、久しぶりに感動しました。

 

 現在の中国でサービス業に従事する人たちの地位はまだまだ低く、働く環境もまだまだ改善の余地があります。そんな中でも、Bさんのように日本流サービスに興味を持ち、笑顔で接客している中国人販売スタッフは確実に増えています。彼女たちの純粋な瞳を見ていると、この国のサービス業も捨てたものじゃないと思います。

 

 

何も買わない客にもやさしい

 

「日本のサービスは実に素晴らしい」――。この言葉、本当に何度も聞いてきました。私がサービス業に携わっているからお世辞で言ってくれるの? 中国であまりに頻繁に耳にするこの言葉、一体どこが素晴らしいのと今度は私から尋ねてみました。

「きめ細やかな心配り」

「心のこもった笑顔」

「誠意のこもった応対」

「礼儀正しさ」

いろんな褒め言葉を頂きました。

中には「何も買わなくても優しい」なんていうものまで。買わないと感じ取った瞬間から無視される、睨まれる、そういう中国での光景を逆に思い出させるような非常にリアルなコメントもありました。

これらは、日本の中では当たり前。つまり日本流のサービスを行う上での「基本」の「き」に過ぎません。でも中国人にとっては、素晴らしい接客態度であり、見習うべき「心構え」であるようです。つまり、これこそが中国人が自国のサービス業に期待している改善点。きっと、「これを覚えれば自分たちも素晴らしい接客ができる」と考えているのだと思います。

 

コツだけ教えて下さい!

 

 こうした日本流の、誰もが心地よいと感じる接客をするために、中国人販売スタッフも「かなり」必死です。ただ必死になるその根底には、「良い接客=売上につながる=ノルマ達成=給与アップ」といった非常にわかりやすい彼女たちなりの方程式が存在しています。「自分の給料を増やすためなら何でも覚えます」的な意気込みです。物を売ってナンボの世界ですから、この考え方は決して間違っているわけではありません。ただ、いかにも安易な方程式から「算出」されたのが、この一言に凝縮されているのが何とも気になります。「コツだけ教えろ」というのですから。

 

 日本流の接客アプローチ法を身につけるために、あれこれ客観的な話を聞かせても、大体の中国人は欠伸ばかりして聞いていません。彼女たちをヤル気にさせるには、まずは目的をハッキリ伝えて、目的意識を持ってもらうようにします。「何のためにやるのか」を明確に示し、その為に「どうするのか」を教えます。すると、「それじゃあ、こんな場合の答えは?」「こう言われたらどう対応するの?」「中国人の消費者は日本人とは違って、いろいろ細かいことまで要求してくるから、できればケースバイケースでたくさん事例を教えて下さい」なんて質問責めにあうこともしばしばです。

そんな時、私はいつもこう答えています。

「接客に関するマニュアルはたくさんあります。だけど、接客は一問一答形式に解決していくものじゃないんですよ。こうきたらああする、ああきたらこうする、そんな風に対処すべきものじゃない。接客とは、そもそも人と人とのコミュニケーション、これで成り立つことをわかってほしいと思います。やはり一番大切なのは思いやりの精神なんです」と。

「コツだけ教えて=要点だけ教えろ=うまい処理の仕方を伝授してくれたら真似する」・・・。そんな発想しか持たない人も少なくありません。まず意識改革から始めないといけないとは思うのですが、これがまた一朝一夕には行かないのです。中国には「13億の市場」があると簡単にいいますが、「売る」ことは決してそんなにたやすいことではないと実感しています。