38・3度の炎天下で“寒々しかった”上海不動産フェア

                                  姫田小夏

上海に来ています。昨日は上海展覧中心で開催されている不動産フェアに行きました。こうした催しは春秋に開催し、うだるような猛暑の最中はやらないのが相場です。けれども、「売れない」ことからの顧客掘り起こしでしょうか、それともこんなに冷え込む以前にブース契約でもしてしまったのでしょうか、一流大手有名デベロッパーから、地方都市のデベロッパーまで一応の顔ぶれを揃えていました。

 

けれども、来場者はほとんどありませんでした。今年に入り、「模様眺め」はいっそう強まっています。さらに下半期はもっと下げるだろうという期待感もあります。

会場のあちこちでは携帯をいじって暇つぶしをしたり、堂々と居眠りをしたり。せっかく呼んできたムード盛り上げ楽団も座り込む有様。あまりの来場者の少なさに販売側の気合いはまったく感じさせられません。

 

星河湾は「富二代」(二世代目の金持ち)のための物件としても有名です。09年の不動産ブームの折には、「モデルルーム見学だけでも50万元」のデポジットを要求し市民を驚かせるなど、当時の狂奔振りを象徴した存在でもありました。にもかかわらず、ブースはけだるいムードに支配され、せっかく用意した商談ブースも、庶民の休憩所と化していました。

 

そのなかでも珍しく長蛇の列を成すブースがありました。「どんな人気物件なの?」と列の頭に駆けつけ覗いてみると、残念ながらそれは「宝くじ」の無料配布の列でした。そこまでして「売れている光景をでっちあげ?」とも思いましたが、それでも「居眠りブース」が圧倒的多いなかで、企業努力するこのデベロッパーはましな存在なのかもしれません。

 

物件はどんどん郊外化、地方化しています。彼らは地図上で物件をマークしますが、同一地図上でもところにより縮尺がかなりいい加減なので要注意です。

 

「この物件、新江湾って書いてあるけど、実際宝山じゃない!」と来場者をがっかりさせる表示も少なくありません。何事も額面通りに受け取ってはならぬという教訓を改めて認識させられます。日本も一昔前、不動産会社は「千三つや」と呼ばれた時代があったことを思うと、なるほどこれもいつか来た道なのかもしれません。

 

物件そのもののハード的な構造もさることながら、誰も責任をとらない、責任の所在を追求できないという目に見えない「構造」も問題です。物件の選択から契約を経て、引き渡しまで、さらにその先の生活において、トラブルという地雷はあちこちに埋められています。「その都度、話が違う!」と楯突いても、「私は知らない」と逃げられるだけ。マイホームは一生ものの買い物であるはずなのに、それが決して幸せのスタート地点であるとは限りません。

 

今まさに流行の「エコノミー住宅」を謳った展示もありました。マスコミ的にはこれが今回の目玉だと伝えていましたが、ほとんどの市民は関心を示していません。「生活困難世帯」にはそれでも高嶺の花で、あまりにも遠すぎるからでしょう。

 

生活困窮世帯とは、夫婦二人とも失業中であるとか、病気であるなどの状態を言います。特に国営企業の倒産とともに失業した世帯は、夫婦合わせて月に約4000元程度(1元=約13円)の手当で暮らしています。

 

エコノミー住宅の展示パネルの前に立っていた来場者の初老の女性は「奉賢!こんなところに住めるわけがないだろう!」と呆れ返っていました。奉賢は確かに上海市ではありますが、つい最近まで農村地帯でした。

 

彼女の夫は老化とともに通院中で病院に近いことが住まいを求める条件と言います。さすがに2時間、3時間かけて都心に出てくるのは不可能です。

 

共産党の党員が腐敗し巨万の富を築く一方で、社会主義国家の主役であるはずの人民の生活は相変わらず困窮しているのが実態。71日には共産党90周年の祝賀が国を挙げて行われましたが、国家の安定にもこのエコノミー住宅の普及は焦眉の課題です。しかし現実は「スローガン倒れ」。市民の声は届かず、むなしく会場を去る実需層の、肩を落とした姿が印象的でした。