団体旅行でも「食」は手を抜くべからずの教訓

                               姫田小夏

久しぶりに会った中国人の友人N女史からこんな話を聞いた。その話は、中国人がパッケージ旅行に何を求めるのか、また、別の角度からは中国の観光地で日本人がどう見られているか、をほのめかすもので非常に興味深いものだった。

 

――中国のある観光地に行ったの。四川省の有名な山でね、日本からも大手旅行会社のツアーの団体さんがたくさん来ていた。そのうちのご一行30人と食事がたまたま彼らと同じ部屋だったんだけど、横目でテーブルを見たらびっくり。ぜんぶ食事は野菜で、肉が全くなかった。何これ、これが昼の食事なの?と目を疑っちゃった。

 

それを中国人ガイドは日本人客にこう説明したのよ。『ここは仏教の聖地だからお料理はすべて精進料理になっています』。

 

よくもまあ、そんなこと言えたものよね、このガイドさん。私たちは肉も魚も注文してたわよ。メニューにはあるのよ、ちゃんと肉も魚も。

 

しかも、中国でなら、他人を招くテーブルに野菜だけ頼むなんてことはしない。ましてやあの大手有名旅行会社のツアーが、こんなひどい食事をお客さんに食べさせるのよ、信じられない。うちの会社も使っているけど、今後は見直すように言わなくちゃ・・・。――

 

ちなみに彼女は中国の大手日系メーカーのNO.2である。

 

さて、パッケージ旅行でお食事が冴えないのは古今東西同じ。ましてや日本人の場合はほとんど地元の料理には期待してはいない。観光地を訪れ記念撮影ができればそれでよし、というのが相場。朝から晩まで移動の繰り返し、ぐったり疲れたところで、「中華料理なんて」と思われるのが関の山、「質素な料理」もある意味、顧客サービスなのかもしれない。

 

昨今は中国でも海外旅行が定番化しているが、しかし、彼らは反対に「食」に関してはがんとして譲らない。このエピソードはそんなことをほのめかしている。食がダメだとみんなNGになってしまうのだ。

 

しかもN女史が腹を立てたのは、「日本人30人のご一行さんはほとんど箸をつけなかった一方で、この中国人ガイドは自分たちだけ別のテーブルで、しっかり豪華な魚料理を食べている」、ということだった。

 

正義感に燃える彼女は、10人ずつ分かれて座っている3つのテーブルを回ってこう言ったそうな。

 

「この○○という名前の野菜は、単独で食べると苦いけど、肉と一緒に煮込んで食べるとおいしいんです。そういうメニューもあるはずなんです。他のテーブルもよくご覧になって!」

 

また、彼女には、「日本人はボーッと座っているだけで何も交渉できない」とも映った。中国人ならば、「絶対、黙っちゃいない」というわけである。他のテーブルと比べて、「あれはなぜ自分たちには振る舞われないのか」をしつこくガイドさんに追求する、というわけだ。

 

「よく周りのテーブルを見てほしいわ、おいしいものがあるんだから!」、と彼女は声を大にして言いたかったのである。

 

他方、「もしかしたら、この人たちはまだ『中国は貧しい、だからしょうがない』と思って諦めているんじゃないかしら・・・」とも。

 

これは中国人旅行客を呼び込む日本も教訓にできるメッセージでもある。いかんせん、格安団体ツアーではそもそも地元のグルメなんかには到底ありつけないが、中国人客はそうは見ていないのだ。そこで安っぽく振る舞えば、それこそ「やっぱり日本はダメだね」ってことになってしまう。(関連記事はこちら  HYPERLINK "http://diamond.jp/articles/-/10313" http://diamond.jp/articles/-/10313)ましてや中国からの客足が遠のいている今は、なんといっても買い手市場だ。これから本格化するインバウンドビジネス、ここが闘いの焦点となるだろう。