ちょっと怖い? いまどきの上海の地下鉄事情

                                 姫田小夏

400キロを計画する上海の地下鉄は昨年の万博を目指して建設が加速、今では11号線を有するまでとなった。同時に郊外とも結ばれ、ベッドタウン化が加速している。交通渋滞に悩まされる上海は、この地下鉄が通勤通学客を輸送する大動脈である。

 

車両内のシートはシンガポールのように固いプラスチック製。つり革の位置は非常に高く不便で、液晶ディスプレイが最新ニュースを伝えるが、「砂の嵐」となっていることも多い。今でこそ少なくなったが、上海万博前までは社内での物売り、物乞い、ビラ配りは上海の地下鉄の風物詩にも近いものだった。そしてこの地下鉄ではいつもいろんなハプニングが起きる。とりわけ、今回の大事故は衝撃が大きい。

 

実は筆者は某大学で中国の都市計画について勉強しているが、この事故を起こした10号線はこの大学の近くも走っている。ひとりの友人は翌日(28日)顔を合わせるなり、興奮気味にこう言った。「30分早くあの10号線に乗っていたら間違いなく272人目の負傷者のひとりになっていたかも・・・!」

 

彼が地下鉄に乗ろうとした10号線は、273時過ぎにはすでに地下鉄の駅は封鎖されており、彼はそれに乗らずに「一命を取り留めた」というわけである。(翌日も折り返し運転で、海倫路と伊リ路の間は運行回復には至っていない)

 

原因は「CBTC信号」の調整中に起こった事故だというが、この信号設備の納入会社(今回の高速鉄道事故も同じ納入会社)には今、追求の矛先が向けられている。

地下鉄にまつわるハプニングは枚挙に暇がないのだが、今まで大事故がなかったのが不思議なくらいである。

 

驚くのは、運転手も車掌も、そしてプラットフォームに立つ駅員らがみんな20代の若手だということだ。あどけなさの抜けない顔で頼りなさを感じることも。

 

先日も地下鉄内で「○両目は扉が開かないので、他のドアから乗降してください」とアナウンスがあったのだが、その声の若さに「こんな若い子が車両の運行を管理しているんだ」と改めて考えさせられた。

 

ちなみにドアが開かなくなるのはしょっちゅうで、目的地で下りられず次の駅まで運ばれしまう不運な乗客は少なくない。

 

また、列車内のアナウンスは最低限のことしか告げない。ラッシュアワーも「中までお繰り合わせ下さい」など、社内の環境整備に対する啓発もなく、真ん中はスカスカ、ドア付近は大混雑という具合である。

 

万博開催中は「下りる人が先」「エスカレーターは右に立つ」というマナーが刷り込まれたものの、今では元の木阿弥である。

 

彼ら鉄道員の顔を見るに付け、「恐らくこの鉄道員もすぐに辞めてしまうんだろうな」と思わずにはいられない。安全を管理する“熟練工”が育つかどうかがとても気になる。同時に「決められたことしかやらない」という上海全体を支配するこの気風ももっと気になる。マニュアル以外のことにまで気を配れて初めて「安全」を保てるのではないだろうか。

 

今日も改札係員に道を聞いてひどい目にあった。“地上の地図”をまったく知らないのだ。改札係員の対応の悪さ、やる気のなさ、彼らの管理意識のすべてを物語ってはいないだろうか。駅全体が安全管理の意識の高さでオーラを発している日本とは雲泥の差。事故が起こらない限り「改善」はないのか? そのためにこの先何人の犠牲を出したらいいのだろうか。