味のローカライズ

                                                                                           姫田小夏

 

蕎麦と書いて中国語ではチャオマイと読む。上海の食品スーパーで「蕎麦面」と書かれたカップ麺が売られていた。日清食品の中国向け商品の開発である。ちなみに「面」とはミエンと読み、「麺」を意味する。

 

和風とあったのでかなり期待して買ってみた。だが、残念ながら、それは麺が縮れていた時点でもはや蕎麦ではなかった。しかもコーンまで入っている。だが、蕎麦だと思わず食べると「これはこれで」という感じで、私には珍しくつゆまで飲み干してしまった。

 

恐らく中国人に試食させたところ、この味に「おいしい」が集中したのだろう。およそ現地化とはこのようなもので、日本の、いわゆる本場の味からはどんどん軸足がズレて行っても仕方のないことなのだ。

 

寿司もまた同じで、カウンターがあって、それなりの形のものが出てくればもはやそれで「寿司」の概念を満たしたことになる。シャリの上に何が乗っていようと関係ない。

 

上海の中心部から離れた鉄道の駅には、そんな「なんちゃって寿司スタンド」がポツポツと散見され、それでも欧米人なんかがそれらしく食べていると「なんちゃって」でもいいのか、と思ってしまう。

 

考えてみれば、焼き餃子や天津丼などは中華料理の日本化の好例だが、その「日本風焼き餃子」がここ数年、「日本からの上陸」とうたって改めてこの上海市場に入ってくるのを見ると、食文化の往来とは興味深いものだな、感じないではいられない。

 

1124日に日本酒や焼酎、泡盛を出展した食品と飲料の見本市が開催されたが、そのなかでおもしろい会社があった。

 

「日本人にとっておいしいものは、必ずしも中国人が感じるおいしいものだとは限らない」ということをよく理解されている会社で、わざわざ中国人好みに商品開発をして、この見本市に出展したのだと言う。

 

日本で売っている商品をそのまま中国に持ち込んで売ろうとする企業は多いが、味の現地化を意識して売るところはまだ少数派だ。パンチの効いた、わかりやすい味だった。これならいけるかもしれない。

 

最近はKIRINの「午後の紅茶」がいろいろとチャレンジしている。日本にない味もある。夕張メロン味のミルクティーや白葡萄のフルーツティーなどは、個人的にかなり気に入っている。試しに日本にお土産に買っていったら、意外にも好評だった。

 

目下、特価セールにつき11.7元で売られている。いまどき4~5元を払わないともはやのどを潤すことはできないこの上海(去年の上半期ぐらいまでは3元で500ミリリットルの飲料が手に入った)では、かなり魅力的な値段だ。

 

しかし、店舗の軒下に積み上がっている在庫の山を見ると、これは果たして中国人に歓迎された味だったのかどうか、ちょっと心配になってくる。