日本の書籍が中国へ 「つなぎ目」となる日中出版交流会に期待

                                  姫田小夏

76日、文京シビックセンターにて、中国環球新聞出版発展有限公司と()日本僑報社が主催する「第1回日中出版交流会」が行われた。高等教育出版社有限公司の龙杰氏を筆頭に、39人の中国出版代表団が来日し、日本からは作家の石川好氏、()トーハンの上瀧博正相談役、()日本書籍出版協会の中町英樹専務理事ほか、複数の関係者が臨んだ。

中国の書籍が日本へ、日本の書籍が中国へと渡る、すなわちそれは文化の往来。対中感情の悪化が指摘される昨今において、書籍という文化交流の延長に日中のビジネスを結実させようと言うこの取り組みは意義深い。そして今年は、日中国交正常化40周年の節目の年でもある。

 

中国では近年、日本の書籍が中国語に訳され、市場に出回るようになった。日本での人気作家は、中国でも人気を博している。例えば、東野圭吾氏の作品などは上海の大都市においても多くの人に愛読されている。日本の立志伝中の人物伝なども人気で、松下幸之助と題する書籍も手に取られているし、徳川家康など歴史上の人物を扱った書籍も、上海の大学生を中心に好まれているようだ。

 

しかし、()日本書籍出版協会の中町英樹専務理事によれば「だが、それは米国で出版された書籍を翻訳したものだった」。中国側が日本からの情報を十分に吸収していない現状が浮かび上がる。

 

また、前述した「大学の門前で売られている『徳川家康』」はニセモノだとも言われている。ベストセラーともなれば瞬く間に「ニセモノが跋扈」という現実は避けて通れない。

 

一方、日本における中国書籍はどうだろうか。

80年代までは中国の歴史や文化を中心としたものがよく売れていたが、最近は経済や法律の関連書籍にシフトしている。中国高等教育出版社の趙亜可女史は、「日本における中国の書籍は、より専門的なものが求められる傾向にある」と話している。

 

筆者自身も、「こんな書籍を翻訳したら日本の読者はもっと中国理解を深めることができるだろう」と思う本はいくつもある。こうした点においては、日本市場における中国書籍はまだまだ未開拓であり、将来において大きな可能性を持っていると言えるだろう。

 

他方、こんな視点もある。石川氏によれば「日本は世界にも稀な翻訳出版大国」だと言うのだ。「例えば、英語にすら翻訳されていないイスラムの文学や歴史などがある。日本は世界の情報をストックとして持っている国。ぜひ、日本語になった著作物を研究してもらいたい」(石川氏)

 

かつて清の時代、清国からの留学生が日本に学んだのは、日本にはすでに「日本が吸収した欧米文化」があったためだ。道理はそれと同じで、日本を窓口にすれば、中国は短時間のうちに効率よく、あらゆる世界の作品にアクセスすることができる、というわけだ。

こうした点における日本の再評価の声は、もっと高まっていいのかもしれない。

 

さて、夢は膨らむばかりだが、現実は問題が山積みだ。

日本側にとっては著作権が保護されてのビジネスであるだけに、中国を相手にビジネスをするのは警戒せざるを得ない。同会では日本側の発言者から何度もこれへの指摘が繰り返された。また、日本側からは「支払い期日の厳守が肝要であること」も強調された。なるほど、債権回収に難しい局面が存在することが透けて見える。

 

中国側にとっても、克服し切れていない問題は少なくない。

「写真などの使用について制限が多いこと」「支払い手続きが煩雑」であることなど、日本とのビジネスにおいてやりづらい点が指摘された。

 

日本は最も版権保護が強い国だとも言われる。果たして、今の中国とどうビジネスを展開していくのだろうか。この書籍をめぐるビジネスは、日中理解においては不可欠の「文化交流」という役目をも持つものだが、なかなか一筋縄では行かない。

 

今回の日中出版交流会は、()日本僑報社(本社:豊島区)がその主催となった。このようなビジネスは、同社社長の段躍中氏のような、日中の両方の文化を知る「つなぎ目役」の存在無くしては成り立たない。今後のビジネス動向も大変興味深いものだが、同時に、同社の取り組みも大いに期待されるところである。