“この時期の竣工式”が意味するもの

                                   姫田小夏

「今週は××社、来週は△△社」というように、華東地区では日系工場の竣工式が続いている。 この時期にもかかわらず、だ。

 

「中国進出に早い遅いはない。思ったときこそ進出時期だ」という言葉をよく聞かされる。上海でコンサルティング会社を経営する友人の、いつものうたい文句だが、果たしてそうだろか、とも思う。

 

日本の製造業が一番潤った時期は、90年代後半まで。2000年に入り、また時を経るに従ってどんどんうまみは薄れていった。

 

早期に中国に上陸した諸先輩方は、道なき道を行くブルドーザーのような勢いと、マスコミの雑音にいちいち左右されない直感と、中国共産党のお役人ですらものともしない図太さがあり、それら天性の冒険心をして、この中国にてそれ相応の果実を得たのだろうと思われる。

 

後にメディアが騒ぎ、「あの取引先も、あのライバル会社も」と中国に道筋を付けて行くのを見て、ようやく「中国」に目覚めた企業は残念ながら遅蒔きの感は払拭し得ない。

 

人件費上昇、物価上昇のみならず、労働者の獲得が難しくなり、その労働意欲すら期待するのが困難になった中国で操業を開始することは、20年前にここに上陸をした工場以上の苦労を強いられることはやむを得ない。

 

同時に、この反日ムードの中で、どう舵取りをしていくか。少なくともこの二重の苦労を背負わなければならなくなる。

 

だが、「この時期、竣工式を迎えた工場」には、何か明るい未来すら予想させる工場もあった。

 

「十八大」の党大会開幕に当たる11月第二週に、この工場は竣工記念パーティを行った。貴賓席には市長、副市長、書記が並んだ。「行けないかも知れない」と事前に予告はあったものの、VIPが顔を揃えるとは関係者も内心びっくりだった。

 

そして、日本人、中国人の招待客らが一堂に会した。

 

日系工場がこの時期行うパーティの類には、日にちをずらして、あるいは時間帯をずらして、日本人と中国人が一緒にならないような配慮をするところもある。それにもかかわらず、「一緒の空間でゴハンを食べた」ことの意義は決して小さいものではない。

 

敷地内には日章旗も揚がった。918日以来ほとんどの企業が控えていた行為でもあったが、一時間程度の時間にわたり、日の丸がはためいた。

 

他方、この工場が立地する開発区は反日デモがなかったとも言われている。蘇州ですら抑えきれなかった反日デモだが、この開発区だけはなんとかそれを抑え込んだ。日系企業だけで3万人の雇用が創出されていることと決して無関係ではない。

 

竣工に至ったこの喜びを、関係者は「運がよかったのかもしれない」と表現した。

 

この開発区に縁を得て投資をし、日中関係が好転の兆しすら見せないこの複雑な時期に竣工し、それでも市長が臨席する竣工式にこぎ着けた。ある意味で奇跡でもある。

 

「中国進出に早い遅いはない。思ったときこそ進出時期だ」とのうたい文句はあながち嘘ではない。これに付け加えるならば、あとは運ないしは縁があるかどうか、だ。

 

そして、運や縁を引き寄せられるかどうかはズバリ経営者次第だ。

 

この時期に、「市長クラス」を引き寄せることができる企業だ。そんな企業にはきっと明るい未来が開けてくるのだと思いたい。