ダッカの土産物発掘とソーシャルビジネス

                                                                                    姫田 小夏

モダンな建物のAarongと買い物に訪れるバングラデシュの富裕層たち
モダンな建物のAarongと買い物に訪れるバングラデシュの富裕層たち

バングラデシュには長い民芸品の歴史があります。絵画、織物、詩集、陶芸、彫刻などの伝統工芸品は一見の価値があります。「ノクシカタ」は刺繍を施したキルト、手頃なものは数百円、また高級品ともなれば数万円の値段をつけますが、手刺繍のぬくもりが伝わるすてきなハンドクラフトです。

 

ダッカには「Aarongアーロン)」という名前のショッピングセンターが数カ所(2012年末時点でダッカに6店舗、チッタゴンに2店舗、その他地方都市に4店舗)にあります。外観もコンテンポラリー・アーキテクトという感じでかなりおしゃれ。ここは、いわゆるバングラデシュの「富裕層」向け高級専門店で、主にハンドクラフト製品を扱っています。ちなみに「Aarong」とはベンガル語で「村の市」という意味です。

 

手の込んだ刺繍のサロワカミーズ(上)洗練された店内(下)
手の込んだ刺繍のサロワカミーズ(上)洗練された店内(下)

私もサロワカミーズというバングラデシュの民族衣装を買いました。民族衣装といっても、ゴテゴテキラキラしたものではなく、ジーンズなどのボトムの上にチュニック感覚で着られる、とても今っぽい感じの服。バングラは女性の服装に関しては保守的なので、むしろこれを着ないと浮いてしまいますが、むろん、これは日本で着るにもかなりOKなファッションです。

 

価格帯は19002400タカ(1タカ=1円)程度、2000円前後も出せば手に入るサロワカミーズは、コットンからシルクまでマテリアルも豊富で、そのデザインや刺繍も凝っています。

 

それ以外のフロアには、ベッドカバーやテーブルクロス、真鍮の美術工芸品や革製品、サリーやショールなどの布製品が充実しています。

 


さて、気になるのはこの「Aarong」という名の流通小売業態。彼らはいわゆるソーシャルエンタープライズの草分けともいえる存在で、1978年に創業を開始しました。この「Aarong」はもともとメノナイト協会の国際開発部門であるメノナイト中央委員会とバングラデシュのBRAC(今では世界最大級に成長したNGO)との提携から生まれました。メノナイト中央委員会は所得創出のための工芸品制作に強みがあり、1940年代にはすでに世界的に小売も行っていたようです。

 

BRACの総裁であるアベット氏は1970年代後半、このメノナイト中央委員会にジョイントベンチャーの話を持ちかけます。そして、村の女性のスキルを向上させるような製品開発をスタートさせたのです。今では、全国に網の目のように生産センターを組織し、スキルトレーニングを与えるなど、バングラデシュの農村女性の雇用創出に貢献しています。この辺は『貧困からの自由』(イアン・スマイリー著)に詳しく書かれています。


また、アベット氏はこの本のなかで「優れた販路があれば本当にバングラデシュの美術工芸品を発展させることができる」と言っています。同時にこの本には、「Aarong」と事業展開をめぐり、非営利組織がどうやって営利事業とバランスを取るかに腐心した様子についても触れられています。


さて、この「Aarong」は、2007年には9000万ドルの総売上に、今では6万5000人の熟練工を抱えるまでに拡大したそうです。商品の魅力もさることながら、「Aarong」というソーシャルビジネスの成功例は、「新しいビジネスのあり方」「新しい消費のあり方」とともに私たち日本人にも多くの示唆を与えてくれます。