中国の中小企業は“時代の潮目”を乗り切れるか

                              姫田 小夏

上海の経済は明らかに低迷している。特に足腰の弱い中小企業はすでにその打撃を受けている。どこも厳しい。今後、中国経済がどうなるのか、企業をどう発展させるべきなのか、誰にもわからない。表向きは自信満々を繕う中国人経営者だが、内心は不安でいっぱいだ。

「企業はどうやって構造転換を図るか、今日はその実例を紹介します」――

5月11日、筆者が通う上海のMBAの講堂は、熱心に講義に耳を傾ける中小企業の経営者でいっぱいだった。この講堂が満席になるときは決まって景気が下振れするときだ。

だが、講義の内容は実はいつもと変わらない。中国の中小企業はいかにして構造転換を図るべきか、あるいは技術革新を行うべきか、講義はその理論と実例の紹介だ。

 聴衆は講義内容を録音したりメモしたりと食い入るように聞き入る。だが、いざ自分の企業の「創新」「転型」(構造転換の意味)となると、何をどうしていいのかわからないのが実情だ。

筆者は中国の中小企業ビジネスマンをウォッチの対象にしていることから、このMBAプログラムに参加している。しかし、中国人経営者の、過剰なほどの自信、あるいは鼻息の荒さとは裏腹に、見えてくるのが彼らの泣き所だ。時代は高成長から低成長の潮目に突入、〝一攫千金〟から利益がなかなか出せない〝儲からない時代〟に移行するなかで、新たなビジネスモデルがつかめる経営者は少ない。

授業に参加するA社社長と仲良くなった。同社は、公共交通機関に納入する特殊な設備を製作する加工会社だ。

彼らは今まで政府人脈のツテで独占にも近い受注を行ってきた。入札時のライバル会社は五指に収まる程度で、たいていはこの会社が落札した。しかし順調な発展は2013年で止まってしまった。今年は前年同期比、半分の業績にも至らない。原因のひとつは他社の参入だった。今年は一気にその数が増え、競争が増した。同時に業界のルールが崩れた。新規参入組は相場を大きく下回る激安金額で落札しまくるためだ。これにはさすがの古株A社といえども手も足も出なかった。

 A社社長は業績不振の遠因をこう受け止めている。

「現政権の腐敗撲滅キャンペーンが私たちの商売に大きく影響を及ぼしているのです」

習近平政権の腐敗撲滅キャンペーンとともに、地方政府がかかわる交通インフラ整備は失速、それがA社への発注量を減らしたと言うのだ。かつてはあちこちに飛行場を作ったり、道路を作ったりとムダな投資が多かったが、現政権はこれを縮小させた。中国では、プロジェクトが立ち上がることは、そこがたちまち腐敗の温床となることを意味した。

「これらが回りまわって資金の循環を悪くし、中小企業に打撃を与えている。私の知る多くの企業はどこも業績が昨年の半分にまで割り込んでいる」とA社社長。

またこうも言う。「中国経済の今までの成長が異常だった。ここで成長はいったん止まったほうがいい。それは私たちも同じこと。だから構造改革に乗り出さなければならないのだ」

とは言うものの、A社社長は「一体何から着手するか」となると頭を抱え込んでしまう。

これまで多くの中国の経営者は「縁故や口利き」のビジネスにしがみついてきた。それが「実は短命だった」ことにも薄々気づき始めたようだ。縁故資本主義からの脱出、伝統的発想からの転換、“時代の潮目”は中小企業経営者に克服するに難しい難題を投げかけている。@@