2013年11月25日、研究会「自信喪失の中国民間ビジネス、頼れるのは日本?」を開

アジア・ビズ・フォーラム(AbF)の研究会では11月25日、姫田小夏AbF理事長が、「中国の強みと弱み」をタイトルに、サブタイトルを「自信喪失の中国民間ビジネス、頼れるのは日本?」をテーマに講演を行いました。

世界第2位の経済力を背景に国際舞台で存在感を強烈に示す中国ではあるものの、実は中身は相当に脆弱さであることを産業力から分析、中国の産業構造の改革の遅れを中心に最新事情を報告しました。その一例として、上海の工業団地では産業構造の転換を推し進めるも、その発想は「不動産の有効利用」が最優先され、企業を育てる意思は薄く、日本の川崎臨海部が実現したような技術革新はなかなか得難い状況であること、また上海の一部工業開発区ではすでに工業から商業への転換が見られるも、依然として「外資(日系企業)頼み」であることの指摘がなされました。「改革開放三十余年、そろそろ自力歩行すべきでは」の問題意識のもと、中国との付き合い方については「ギブだけでは限界」とも指摘されました。日本と中国の工業化のプロセスは相似形を成していると認識されているにもかかわらず、その質の差は相当の開きがあることにも言及、さらにその差異については「すでに論文を通して提言した」との報告もありました。

講演後は、質疑や出席者の中国体験や対中感が述べられ、いつもながらの交流が活発に行われました。中国の不動産バブルについて、「政経一致の中国では、土地は国・党の管理下にあり、バブル崩壊は食い止められる」との見方もありました。シャドーバンキングや小企業の資金調達方法についても議論が弾みました。中国で独自の技術開発がむずかしいのは、「技術者の会社忠誠心が薄く、成功すると転職・起業するため、社内開発の誘因が少ない」と解説され、トヨタの常熟R&D拠点設置は要注目と紹介されました。また、富裕層に儒教回帰の動きがあるのは安堵点です。中国人のモラルの低さも指摘されましたが、日本でも食材表示偽装問題が発生、会社の管理システムでは解決できない、「バレなければいいか」という態度は日中「同根」の問題でもあります。

今年の研究会は、中国、バングラデシュ、ブータンとテーマも多彩になりました。来年も、アジアを軸にローアングルで外を知り、参加者間の交流を深めて行きたいと思います。 

2013年10月7日、研究会「ブータンは本当に幸せ?」を開催しました

10月7日、アジア・ビズ・フォーラムは、ブータン王国からアジア経済研究所に出向中のフンツォ・ラプテンさんを講師にお迎えして、「ブータンは本当に幸せ?」をテーマに研究会を開催しました。在日のブータン人はたった54人(2012年 外務省統計)、今回は現地情報を得るのには大変貴重な会となりました。また、アジア経済研究所新領域研究センターの村山真弓次長の通訳のご協力も頂き、いつも以上に熱い交流を図ることができました。

 

参加者の方からいただきました次のメッセージを、会のご報告とさせて頂きます。

 

「このたびは貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。前日、NHKスペシャル『空前の農民大移住』(重慶の農民をほぼ強制的に農地から引き離し、開発を進めるプロジェクト)を見て、これは、絶対に、人間の幸せに反している!と思ったばかりなのでそのような中国での経済開発とまるで対極にあるブータンの方針をうかがうのは刺激的でさえ、ありました。

 

日本でも3.11からの復興で「大規模開発や従来型の企業誘致はもう不可能だし、それがベストではない」というような流れで見ると、国民総幸福量(GNHの話は興味深く、やはり、住み慣れた土地で困窮せず家族一緒に暮らせることが、究極の幸せの一つの要素ではないかと思いました。

 

ブータンが外交戦略として国民総幸福量を世界に広めようとし、既に国連まで巻き込んでいるということは、なかなかすごいなと思いました。

 

今回、感じたのは、ブータンにとってインドや中国は巨大すぎて「隣人」という対等な関係性を語るのは難しいかもしれないけれど、ネパールとの関係こそが、「隣人」に近いのかもしれないなということです。

 

私の思い違いかもしれませんが、「観光はネパールのように多くのバックパッカーを入れるようにはしたくない」というご発言からも、それを伺うことができました。そのためブータンでは完全な自由旅行は認められていません。

 

また、閉会後、Rapten氏に「ワンチュク国王は、なぜ自発的に王制をやめて立憲君主制に変えたのですか?」と質問したら、よくぞ聞いてくれました!という感じで「王一人の能力に依存する体制はよくないと思ったから」というようなご回答が返ってきました。ここからもネパールとは別のやり方で王制を廃止したブータンの姿が垣間見られました。

 

同じ山岳民族でも、ブータンとネパールは気質が相当に違うのでしょう。厳密には国境は接していないですが、中国製品もネパール経由で入ってくるということでした。

 

ともあれ、バングラデシュに続いて実り多い会を企画していただき、どうもありがとうございました」(和光国際高校 中国語講師 今井佳子)

 

・・・・・・ということで、次回も参加者のご期待に添う企画を考えたいと思います。改めてご案内を差し上げますので、みなさま、ふるってご参加ください。

ラプテンさんを囲んで記念撮影
ラプテンさんを囲んで記念撮影

カレーを食べたら、バングラデシュが近づいてきた! 7月29日開催のカレーイベントのご報告

729日、アジア・ビズ・フォーラムは、ムック本「バングラ・ビジネス最前線」の出版を記念し、「カレーイベント」を東京・阿佐ヶ谷で開催しました。当日は、バングラデシュ出身の倉沢宰立教大学特任教授、バングラ・ビジネスに奮闘中の矢萩章エヌ・ウェーブ社長、さらにNGOのシャプラニールを代表して菅原伸忠さんから一言ずつスピーチを頂きました。特に今回は倉沢宰先生からはタゴールの詩の朗読を頂きました。

 

世の中、異業種交流会はあちこちにありますが、今回は女性の参加率も高く、ビジネスパーソンに偏らず年齢を超えた、充実した交流会になりました。この可能性に満ちたすばらしい顔ぶれに、私たち主催側も感動の一夜となりました。ご参加の皆様からは沢山のコメントをお寄せ頂き有難うございました。その一部を下記にご紹介をさせて頂きます。

 

「タゴールとイスラームの詩は感動的でした。ベンガル語の響きが耳に残っているようです」(Sさん)

 

「あれから、You Tubeで、タゴールソングを聞いてみました。穏やかなようで、力強く何か根源的なエネルギーを感じ、魅了されました。また、何かお勧めのベンガル音楽があれば、お教えくださいませ。<中略>アジア・ビズ・フォーラムは、こじんまりながらも、どんどん異質なものを取り入れるパワーが心地よいと感じております」(Yさん)

 

毎回、いい会、出会いを設定していただきありがとうございます。昨日は矢萩さんのお話を聞きたかったのですが、間に合わず、残念でした。私としては、女性が多いのはやはり華やかで、いいものです」(Hさん)

 

「とても楽しい会であると同時に、大学院時代の同級生と実に9年ぶりに出会うことができてとても興奮しました。正に縁を感じました」(Nさん)

 

 

「カレーも美味しかったですし、ふだん絶対に知り合うことのないような方々とお会いできて、たいへん有意義でした」(Jさん)

 

「私の家内に話をしたら、家内も出たいと言っておりました。次回は家内も一緒に出させて欲しいと思います。こうした集まりが直ぐに当社の商売になるとは考えていませんが、お集まりのみなさんとの交流は、いろんな繋がりを生みだせるパワーになると考えております」(Tさん)

 

「参加者の皆さんの想いがそれぞれあって、バングラデシュの縁で何かが動き出す気配、とても良い時間をありがとうございました。参加者の皆さんもいつもより若い世代(?)で、軽やかなエネルギーが飛び交っていましたね」(Iさん)

 

皆様、お暑い中をご参加頂き有難うございました。アジア・ビズ・フォーラムは、この輪が広がることを祈念しつつ、次なる機会を設けていきたいと思っていますので、引き続きご愛顧をお願い致します!

同行取材時のアベッド会長夫妻とAbFスタッフ
同行取材時のアベッド会長夫妻とAbFスタッフ

活動報告「BRACアベット会長の訪日をサポート」

アジア・ビズ・フォーラムは、立教大学経営学部教授笠原清志先生とともに、世界最大のNGO組織であるBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)のアベッド会長ご夫妻来日時の、日本企業訪問のお手伝いを行いました。

BRACアベッド会長ご夫妻は、521日に来日され、日本経済新聞社主催第19回国際交流会議「アジアの未来」(マハテイール元マレーシア首相が運営委員長)JICA田中理事長と対談されたほか、TV出演や記者会見にも臨み、また最終日には首相官邸での夕食会にも臨席されました。

 BRACは世界最大のNGOであるだけでなく、世界で最も尊敬されるNGOとして評価されています。また、貧困対策、女性のエンパワメント、福祉・医療分野だけでなく、ノンフォーマル教育でも多くの貢献をしており、その実績はユニセフやビルゲイツ財団等でも高く評価されています。

 5月27日公文教育研究会の代表取締役社長のお招きにより実現した対談では、KUMONに関心を持ったきっかけから始まり、またバングラデシュの教育制度の現状や、BRACスクールの役割や意義、またBRACスクールの教員の採用やトレーニング方法などについて取り組み状況をめぐっての活発な交流が展開しました。

 姫田理事長が取材した対談の詳細は、6月12日のダイヤモンドオンラインに掲載され、アジア・ビズ・フォーラムが出版したの情報誌「バングラ・ビジネス最前線」にも掲載しました。

7月の研究会、及川講師が語る「中国の環境問題、解決困難なその理由」

 アジア・ビズ・フォーラムは7月9日、中国ビジネス経験26年のACROSS JAPAN(株)の及川英明代表取締役を講師にお迎えし、「中国の環境ビジネス」をテーマに大変詳細な現地事情をお話しいただきました。

 

 中国の環境問題の解決は困難な状況ですが、次のように論点整理されます。

 

  1. 中国の行政当局に「問題が起きない限り黙認」という体質がある。
  2. 汚染が発生した場合、発生源の企業は地元の重要な納税企業でり、摘発できない。
  3. 罰則が弱い。大気汚染防止法違反の罰金は50万元が上限。
  4. 製鉄所には脱硝装置が設置されているが、多額の運転費用がかかるので稼働させない。
  5. 中国の管理体制に問題有り。各部門間で責任転嫁をしあっている。
  6. 市民の参画が合法化されていない。控訴する権利を持つのは「中華環境保護聯合会」のみ。
  7. 経済至上主義。環境対策費はGDPの2%(日本は最高時に8.5%)。

 

 環境問題に続き、及川講師は中国東北部の経済や尖閣諸島を巡る日中問題にも言及されました。講演後は、質疑応答や参加者からも忌憚のないご意見を頂くことができ、会場の熱気は大いに高まりました。終了後、そのまま二次会の場へと移りましたが、ここでは意外なテーマでさらに大盛り上がり。現段階でその内容は非公開とさせて頂きますが、これをヒントに次回の「研究」に結びつけていきたいと思います。これはどなたも漏れなくご関心があるテーマです。次回のご案内を楽しみにお待ち下さい!

2013年6月6日、研究会「最近の日中関係と中国ビジネスの進め方」を開催

 アジア・ビズ・フォーラム(AbF)は66日、菅野真一郎東京国際大学客員教授・前みずほコーポレート銀行顧問を講師にお迎えして、「最近の日中関係と中国ビジネスの進め方」をテーマに研究会を開催しました。菅野講師は旧興銀では中国関係の要職を歴任され、日中投資促進機構事務局長時代を含め一貫して、日中ビジネスへの助言提供とともに、トラブルを抱えた進出日本企業を守る「駆け込み寺」の役割を果たされました。

 菅野講師は、習近平体制の評価、尖閣問題の見通し、中国ビジネスの進め方を中心に講演し、講演後は出席者の自己紹介に続き、講師との質疑、参加者同士の交流が活発に行われました。

 尖閣問題から冷え切った日中外交関係が続いていますが、中国の本音は、「公害、高齢化、環境問題を経験した日本の技術を入手するためにも日本と親しくしたい」ようです。既に中国側からは、正常化に向けた政治的シグナルが発せられています。812日に日中平和友好条約35周年を迎えます。改革解放路線を継承し、日本に偏見がないとみられる、習近平国家主席と安倍首相の早期対話の実現は、「政経一致の国」中国とビジネスを進める経済界の一致した願いではないでしょうか。

 

2013年4月24日、研究会「中国ビジネスの原点と逆境への対応」を開催しました

 今回は、イト-ヨーカ堂の中国成都店、北京店の経営責任者として15年間現地で陣頭指揮された、(株)セブン&アイ・ホールディングスの麦倉弘顧問(前イト-ヨーカ堂中国総代表)を講師にお迎えし、中国小売業の経営体験に基づく、「中国ビジネスの原点と逆境への対応」を語っていただきました。2012年9月、中国各地で反日デモが吹き荒れましたが、イトーヨーカ堂の店舗はほぼ無傷でした。その理由は何なのか、が改めて伝わってくる講義でした。

 講演ではイトーヨーカ堂の中国進出経緯、開店前後の苦労談、反日デモへの事前の備えなど、臨場感溢れる具体例が紹介されました。さらに、「明確な経営理念と上司の率先垂範」「ネット情報収集の重要性」「やればできる、あきらめない」「戦略家と実践者が必要」など、逆境における中国事業経営の勘所について熱弁がふるわれ、有意義な講演をいただきました。

 とりわけ、示唆に富んでいたのは、「イベント豊富な売り場展開」です。イトーヨーカ堂は進出当初、中国当局から「売り場にイベントを盛り込んでくれ」という要望があったそうです。単調な市民生活の中に、季節の伝統行事に加え、クリスマスやバレンタインデーなど国外の文化も移植してほしい、という要望なのでしょう。開店当時はなおのこと、殺伐とした生活の中に「日式売り場」が提供した行事を織り交ぜた販促活動は、地元市民にとってもひとつの楽しみになりました。昨今もまた、この「イベント型販促活動」がいっそう求められています。土日は自宅でゲームや連ドラ鑑賞に興じる中国人が多い中、街に繰り出す楽しみを与えるのはこうした外資の売り場ではないでしょうか。中国経済における消費が落ち込む中で、日本企業が得意とする「イベント中心」の消費スタイルはまだまだ発展の余地がありそうです。

 他方、麦倉講師ご自身の生き様も垣間見ることができました。異動命令が出たのは50歳のとき。中国へは「骨を埋める覚悟で行った」といいます。また「中国ではさんざん金を使った」とも。「さんざん金を貯めた」ではなく「使った」というのです。これはちょっと驚きでした。例えば、社内でサッカーチームを発足させるにも、練習場使用料から最後の打ち上げ費用まで全部自分持ち。日本の駐在員はそれこそ手当だけで「蔵が立つ」とも言われる海外赴任ですが、麦倉講師はむしろ(当時赤字の)会社と社員を庇うようにして自らを犠牲にします。逆にいえば、ラーメン一杯でも「発票」を請求する日本人駐在員もいれば麦倉講師のように「ポケットマネー」で動く日本人もいる、そんな日本人の姿を中国人社員はじっと見つめているはずなのです。「自らが人柱になる」――、麦倉講師の、そんな仕事魂も伝わってくる研究会でした。

 また、麦倉講師独自の人事配置法も会員の興味を引きました。昔話の桃太郎にたとえ、キジの役割、サルの役割、イヌの役割を説きます。キジは空から俯瞰する、サルは木からものをみる、イヌは地面でものをみる、つまりそれぞれ目線の異なる=能力の異なるメンバーを集めよ、というメッセージです。

 麦倉講師は言ってみれば「熱い人」です。いまどき日本企業に珍しい、と言っても過言ではありません。しかし、麦倉講師のご活躍と中国法人の発展を見るに、要は中国ビジネス、「熱い仕事魂があってこそ」だということがわかります。熱い人材を育て会社や周囲がそれを応援し、ひとつのビジネスを成就させる。中国ビジネスだけではありません、グローバル化が避けられないこの時代に、道なき道を切り開くのは、語学でも海外経験でもなく、要はこの「熱い魂」なのです。日本企業は今、そんな熱い人間をいったいどれだけ抱えているのか、そんなことも考えさせられました。

 当日は生憎の雨模様でしたが、大学教授、エコノミスト、コンサルタント、メディアとふだんにも増して多彩な顔ぶれが集まり、賑やかな研究会となりました。次回は66日を予定しております。案内文は近々発送を予定しています。

2013年3月22日、「第1回バングラデシュ・ミッション報告会」を開催しました

 

 アジア・ビズ・フォーラム(AbF)は322日、「第1回バングラデシュ・ミッション報告会」を東京ウィメンズ・プラザで開催しました。AbF5人がダッカを訪問した3月初めの3日間は、バングラデシュ全土でハルタル(ゼネスト)が吹き荒れ、交通が規制され商店・オフィスは休業・休止状態でしたが、現地ナビゲーターのリキシャ(自転車タクシー)・CNG(3輪タクシー)を駆使した絶妙な道案内により、ほぼ予定通りの面会・視察ができました。ダッカ名物の渋滞に巻き込まれずにスムーズに移動ができ、不運(ハルタル)が好機(渋滞なし)を呼んだ、濃密且つ有意義な3日間でした。

 

 報告会では、姫田理事長の「スライドショー」による行程紹介の後、田丸会長が「バングラデシュ・ミッション報告」として、バングラデシュ概要、ビジネス環境、将来はどうなるのか、について報告・問題提起をしました。ミッション参加団員や出席者からの感想・意見に続き、姫田理事長より「中国人にとってのチャイナ・プラス・ワン -バングラデシュと中国ビジネス-」の報告がありました。

 電力・交通インフラの未整備、ハルタル頻発など、ビジネス環境は総じて厳しい状況ですが、バングラデシュの高い潜在成長力と親日的な人間性は魅力的で、参加者から建設的な意見が次々と述べられました。「手作業の企業進出は宝の国」、「中期展望で人材を育成したい」との見方や、「中国で成功した日本企業は90年代進出組、メディアが騒ぎ出す以前のことだった」、「中国人と連携したバングラデシュ進出も有望ではないか」と、姫田の見解に多くが賛同しました。ダッカで見聞した、日本では忘れ去られた「原風景」は中国内陸部で残存しており、中国人には違和感のない市場かもしれません。ただ、「パートナーとの信頼関係構築」が重要でむずかしい点は万国共通のようです。

 「子供や女性の輝いた目、明るい顔は、未来を信じているからだ。日本は豊かなのに暗い」と、議論は閉塞的な日本の社会構造、教育問題へ及び、ゆとりのあるバングラデシュ流生き方を羨望する意見も述べられました。

 他方、バングラデシュは貧困克服、インフラ整備など多くの難題を抱えていますが、行政の行き届かない分野(教育、保健医療、農村金融など)で様々なソーシャルビジネスが生まれています。「貧困層の自立支援」を掲げるBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)は世界最大のNGOへ成長しています。今回、面談したN-Wave社(本社:東京)がダッカで始めた国営バス向けIC乗車カード事業は、交通インフラ向上とマナー改善に大きく寄与しています。小体ながらも、バングラデシュの重要な国造りに貢献しています。今後も、「日本の中小企業が参入できるバングラ・ビジネスとは何か」という視点を持ちつつ、アプローチを続けて行きたいと思います。

 

バングラデシュ訪問記

訪問メンバーと現地の案内の方々
訪問メンバーと現地の案内の方々

 アジア・ビズ・フォーラム(AbF)は5人のミッションを組み、201333日から3日間、バングラデシュを訪問しました。前夜ダッカに到着すると、上海から先に入っていた姫田理事長から、「明日から3日間ホテルに缶詰も」と告げられ、一同眼の前が真っ暗になりかけました。イスラム政党指導者の戦犯裁判を巡り、全土でハルタル(ゼネスト)の実施予告が発表されたとのこと。現に、翌朝から交通が規制され商店・オフィスは休業・休止状態となりましたが、現地ナビゲーターのリキシャ(自転車タクシー)・CNG(3輪タクシー)駆使した絶妙な道案内により、ほぼ予定通りの訪問・視察ができました。ダッカ名物の渋滞に巻き込まれずにスムーズに移動ができたのも、5人の冷静沈着なリスク判断と臨機応変且つ果敢な行動結果です。不運(ハルタル)が好機(渋滞なし)を呼んだ、濃密且つ有意義な3日間でした。

 

33日(日)

 早朝5時半、窓外のコーランの朗誦で目が覚める。ハルタルで一般車は通行禁止となりもともと予定していたいくつかの訪問は中止する。急遽、メンバーの友人で、ダッカでバッテリー工場を立ち上げた中国人経営者と共同経営者のふたりが1日案内人を務めてくれることになる。共同経営者のDing Leiさんは武漢出身だが、アフリカで6年、ダッカで2年ビジネス経験あるタフガイ。ベンガル語が達者で、国会議事堂など名所観光を効率的に楽しめた。特にオールド・ダッカ案内は圧巻。ボート遊びの後、店が密集する細い路地をクラクションを鳴らしながら通行人、リキシャを避けながらCNGで爆走。インディー・ジョーンズ並みの冒険気分、爽快感を満喫できた。この間、Dingさんは逐一、オールド・ダッカ在住の友人に安全情報を確認してくれていた。彼らのネットワークはあちこちにはりめぐらされている。

 ランチはボシュンドラ・シティのフード・コート。手軽に地元料理を味わう。夕食はホテル・サリナのカレー・バイキング。3日間で飲酒(ビール)したのはここだけだった。

 以下に今回の訪問場所とそこで頂いたコメントをまとめた。

 

BSEC会長のAtaur Rahman氏
BSEC会長のAtaur Rahman氏

34日(月)

1.Bangladesh Steel and Engineering Corporation (BSEC) を訪問、Chairman,Ataur Rahman氏と面会 

  • BSECは製鋼所と造船所の統合により1976年に設立された国営コングロマリット。政府51%民間49%出資。傘下9社の主要製品は、パイプ、変圧器、電線、銅線、蛍光灯、カミソリ刀、鋼橋、バス、トラック、オートバイ、ミシュック。船舶解体・修復施設、ドックを保有。9社の従業員数2560人、2011/12年度の年商は約9億円。主力の鋼管は国内ガス管向け。日本のガス管はシリンダーでありBSECは生産していない。グループAtlas Bangladesh社のオートバイも有望で、輸入部品を組立て外国ブランドで国内販売しているが低採算。

 

面談後にNassa Groupの方たちと。工場内は撮影禁止でした
面談後にNassa Groupの方たちと。工場内は撮影禁止でした

2.縫製工場Nassa Groupを訪問、Exective Director Dewan Aybur Rahman氏と懇談  

  • ニット製品・既製服はバングラデシュ最大の輸出品目(シェア78%)。Nassa Groupは業界5位の有力既製服製造会社。グループ全体で月300万着製造。
  • 1990年設立のグループ内衣服受託生産工場を訪問。ダッカ市内の老朽ビルの8フロアに1200人の従業員が10時間働いている。年商約2億円(156百万タカ)。
  • 綿糸を中国、インド等から輸入し、10ラインでブラウス、シャツ、ジャケット等を製造。主に欧米向けに輸出している。自社ブランドはなし。日本のQCシステムを導入、100%検査する。品質には自信がある。H&Mも顧客。日本企業の当社への発注はない。工員は平均5年勤続。平均年齢25歳。5年で熟練工になる。平均賃金は月5千タカ(約5千円)。増員、品質向上による生産性向上が課題。不良率は縫製で2%程度、洗浄工程では5%位。

 

3.孤児院のBottomley Home Orphanage を訪問

  • 6-16歳の宗派は様々な孤児を収容。ベッド70床。満員状態でウエイティングリストがある。
  • 財源は基金と政府補助が半々。月1000タカ/人の政府補助あるが、700タカは食費に消えるので財政は厳しい。地元の人が助けてくれる場合もある。記念日などにはお布施などに積極的になってくれる。
  • 教師は9人(内常勤は6人)。増員が必要だが無給ゆえ人材確保も困難。
  • 卒業後は父母のどちらかがいる場合は送り戻すか、親戚に戻す。毎月1回、彼らは孤児院に戻り近況を報告する。

 

右側がMd. Shahjahan Ali氏
右側がMd. Shahjahan Ali氏

35日(火)

4.N-Wave Co.,(BD)Ltd Managing DirectorMd. Shahjahan Ali,Managingによるレクチャー.

  • 20118月より開始された、N-Wave Co.,(BD)の国営バス会社(BRTC)向けIC乗車券カード事業の話を伺いました。
  • ソニーが開発したフェリカ・ブランドの強さとJICAの物心両面からの支援、現地での粘り強い交渉により、インドIT企業等に競り勝って落札。IT導入はバングラデシュのバス交通サービス向上に寄与しています。BRTCは、オンラインで販売額が瞬時に把握可能となり増収効果も実現。チケット売り場・運転手の不正防止に有効で、乗客側もキャッシュレスで乗車可能となり、「釣銭がもらえない不安」も消え、行列の短縮化など多くの効果が得られました。
  • 現在バス2路線に2万枚を無料配布、普及率は35%。女性に好評。事業黒字化には、BRTCからのサービス料引き上げ、路線の拡大、共通カード化促進などが必要。

 

左から2人目がMomtaz Bhuiyan氏
左から2人目がMomtaz Bhuiyan氏

5. NewVision Solutions Ltd.Chairman, Momtaz Bhuiyan氏と交流 

  • 1963年高卒後訪日、千葉大、阪大で学び、IHIで研修を受ける。68年パキスタン学生連盟最後の会長となり、日本のバングラデシュ独立運動のリーダーとなる。独立後73年帰国、日本大使館で日本語教師に。OISCAセンター設立、農業開発支援に従事。83年ダッカ市・西尾市が交流開始。
  • NewVision Solutions を設立し約30年、日本企業の進出に関する助言、市場調査に従事。
  • 将来の夢は、Univ.of Peace and Developmentの設立。

 

ハルタルのデモ行進
ハルタルのデモ行進

(後記)

 私には、3回目の暴動・デモ遭遇体験(1976年のマドリッド・国民投票、99年のジャカルタ・金融危機)でした。今回のハルタルは、バングラデシュ独立時の東西パキスタン対立構図が遠因の政治抗争です。独立を支持しODAによりバングラデシュの発展を支援し続けている日本に対する反日感情は全くないものと思われ、街中でも恐怖感が少なかったのが幸いでした。

 「アジア最貧国」「人口高密度」「親日国」「ベンガル語を話すイスラム国」「インド的でアジア的」「衣服輸出と海外送金が支える経済」のバングラデシュ。「政治はハルタルを抑止できるか」「ベトナム、ミャンマーに追いつけるか」の問いが頭を離れません。「どのような国造りを目指すのか」の問題意識とともに、注目していきたいと思います。

(田丸 周・記)

 

2013年2月6日 中国、バングラデシュの2本立てセミナーを開催

「行き詰まる中国社会と日本企業の行方」 「縫製工場から見たバングラデシュにおける経営課題」

 アジア・ビズ・フォーラム(AbF)は26日、中国とバングラデシュをテーマに2本立ての研究会を行いました。

 前半はアジア・ビズ・フォーラム理事長姫田小夏より、「行き詰まる中国社会と日本企業の行方」をテーマに、習近平新政権の課題、日中ビジネス動向など最新の中国情勢が語られました。昨年の経済成長率が13年ぶりに8%を割り、景気対策として都市化政策が発表されており、不動産バブル再燃の気配もあるようです。昨年秋の尖閣国有化問題を機に頻発した反日デモは一服しましたが、恒常的な賃金上昇圧力が続いています。日中ビジネスへの悲観的見方も広がっていますが、日本企業の「安心・安全・健康」面の競争力や、反日デモで無傷だった実例が紹介され、「日本企業と日本人の有形無形の貢献」を意識し、右往左往せず毅然と対応すべきと強調されました。 

 後半は、日本におけるバングラデシュ地域研究の第1人者、文京学院大学の日下部尚徳助教から、「縫製工場から見たバングラデシュにおける経営課題」を講演していただきました。日下部先生はバングラデシュの概観、経済構造を説明された後、経済の大きな柱である縫製業の経営実態を通して、労働事情、社会情勢、ベンガル人の特性などについて語りました。「9割がインドに囲まれインドの影響が強い」「イスラム・ビジネス入門に最適国」「世界最高の人口密度と中間層の成長期待がビジネス誘因」「電力不足、交通渋滞、汚職が懸念材料」「低賃金労働者は使い捨て、技術蓄積が薄い」「けんか腰で応対しないこと」などの見解が述べられました。講演後、「反印感情は強いか」「農業、不動産、金融も成長業種か」「アジア他国に比べて賃上げ率は低い」など活発な意見交換や質問が続きました。